2021年5月3日月曜日

牧師エッセイ(2021年5月)

国会に提出された入管法の改正案「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案」が激しい議論を巻き起こしています。
特に、法務省が難民と認めない決定を2回下せば、3度目は強制送還が可能となってしまう仕組みが人道的な面で問題視されています。
これまでも国外退去の命令を受けた9割の人々は応じていますが、それでも帰国できない人々は命の危険がある祖国に帰れない事情を抱えており、迫害などによって心も体も傷つけられ、逃げてきた人々も少なくないからです。
そもそも世界的に見ても、日本の難民認定率はあまりに低く、申請者に対してわずか0.4%程度しか認定されていません。
難民一人ひとりのいのちに寄り添うことができない現状があるのです。

国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」というものがあります。
貧困や飢餓、健康や教育、環境問題などに関する17の目標を全世界で達成しようとするものです。
しかしSDGsでは「地球上の誰一人取り残さない」ことを誓い、日本もそれに積極的に取り組んでいるとされていますが、この改正案はそれとは全く逆行するものであると言えるでしょう。

キリストは「隣人を自分のように愛しなさい(ルカ10:27)」と言い、善いサマリア人のたとえの中で、私たちが誰かの隣人となっていくことを勧められました。
私たちも一人ひとりのいのちを取り残さないために何が出来るか、祈りと共に問い続けてまいりましょう。