2022年5月2日月曜日

牧師エッセイ(2022年5月)

第94回アカデミー賞授賞式でウィル・スミスがクリス・ロックによるジョークに激怒し、その場で彼に平手打ちをするという出来事がありました。そのジョークはウィル氏の妻が脱毛症に悩まされていることを侮辱するようなものであったからです。
彼は受賞スピーチの中で、謝罪するとともに、同席していたデンゼル・ワシントンから「最高の時こそ気を付けろ。悪魔はそういう時にやってくる」と助言を受けたことを明らかにしています。

宗教改革者マルティン・ルターは悪魔についてこのように教えています。
「悪魔はあなたのすぐ近くにいることを知っておきなさい。……私たちがキリストよりも、自分自身の力や他の友人達を頼ったり信じたりするようにさせる専門家です。」

ウィル氏の怒りは決して理不尽なものではありませんでした。
大事な家族が悩んでいることをジョークで茶化されれば、誰でも嫌な気持ちになるものです。
しかし、そのような状況の中で暴力という自分の力に頼ってしまったことが、彼にとって悪魔の誘いであったのです。

「一切高ぶることなく、柔和で、寛容の心を持ちなさい。愛をもって互いに忍耐し、平和のきずなで結ばれて、霊による一致を保つように努めなさい。(エフェ4:1-3)」とパウロはエフェソの教会の人々に勧めています。
逆に言えば、わたしたち人間関係の中で、このような柔和と寛容、愛と平和は失われやすいものだということでもあります。

あの日ウィル氏を支えた人物の言葉に、このような悪魔の誘惑に立ち向かうための一つのヒントが隠されています。
劇作家であるタイラー・ペリーは、彼は激高したウィル・スミスにすぐさま駆け寄り、彼のために祈りを捧げたのです。彼はそれを「唯一の解決策だった」と話しているのです。

コロナ禍や乱れる世界情勢の中で、私たちが誰かのために祈ること、出来れば一緒の場所で祈りあうことこそ、私たちを神様の愛と平和へと立ち返らせる唯一の道が開かれていくのです。